腟萎縮のメカニズムとは?症状を感じたらクリニックを受診すべき理由も紹介
人間は誰しも必ず歳をとるものですが、体が老化するとともに腟も老化して萎縮してしまうことをご存知ですか?
多くの女性が日常生活の中で顔や体の衰えを感じているものの、なぜか腟に関しては気にしたことがない、もしくはなんらかの症状を感じている場合でも、腟が萎縮しているとは思っていないようです。
本記事では、日常の中ではあまり知ることができない「腟萎縮」のメカニズムやクリニックを受診すべき理由をご紹介します。
腟萎縮とは
腟萎縮とは、老化によって腟が萎縮して腟内の環境が変化していくことです。
年齢を重ねると、顔にシミやシワ、たるみが現れるのと同じように、デリケートゾーンのエイジングサインとして腟が萎縮するという現象が起きます。
腟萎縮は女性なら誰もが経験することです。しかし、だからといって何の対処もしないまま放置してしまうと、知らず知らずのうちに萎縮が進行し、さまざまな不快な症状に悩まされることになるかもしれません。
腟萎縮のメカニズム
一般的に、腟萎縮がはじまるのは30代後半からだといわれています。30代後半から40代前半にかけて徐々に腟の老化が進行し、40代後半から50代にかけては、急激に老化が進んでさまざまなお悩みを引き起こします。
では、腟の萎縮は一体どのように起こっているのでしょうか。ここでは、腟萎縮のメカニズムをご紹介します。
1:閉経
閉経とは、月経が完全に停止した状態のことです。日本人女性の平均的な閉経年齢は50〜51歳くらいですが、個人差もあるため40代で閉経を迎える方もいれば、50代後半まで月経がある方もいます。
医学的には、1年以上月経がない状態になると、閉経と診断されます。
閉経すると卵巣機能が停止したり、人によっては腫瘍などの治療で卵巣を摘出したりすることも。それによってホルモンの分泌量が急激に減り、次第に体内で変化が起こるのです。
2:エストロゲン分泌量の減少
閉経の前後5年間のことを更年期と呼び、この期間に入ると卵巣の機能が低下しはじめ、十分な量のエストロゲン(卵胞ホルモン)を分泌できない状態になります。
エストロゲンとは、脳からの指令によって卵巣から分泌される女性ホルモンのひとつで、主に生殖器官を発育・維持させる働きをもっています。また、女性らしい丸みのある体型を作ったり、肌を美しくしたりする作用も、エストロゲンの重要な役割です。
エストロゲンの分泌量は、毎月変動を繰り返しながら20代〜35歳くらいまでピークが続き、その後45歳くらいまでは徐々に減少、それ以降は急激に減少します。
エストロゲンの分泌量が減少してくると、腟壁のコラーゲンも減少し、腟内が乾燥して腟の萎縮が起こるなど環境が変化するため、デリケートゾーンにさまざまな不快な症状が引き起こされるのです。
3:不快な症状が引き起こされる
以下は、エストロゲンの分泌量低下により引き起こされる不快な症状です。
腟の血流低下による症状
腟の末梢血行が低下することによって栄養機能が低下し、線維芽細胞の活性が減ると、保水レベルが低下して腟が乾燥します。それにつれて腟内部の分泌物も低下し、以下のような症状が引き起こされます。
- 腟の乾燥感
- かゆみ
- ムズムズ・灼熱感
- 性交痛
デリケートゾーンのかゆみや灼熱感は、非常につらいもの。性交痛にいたっては、パートナーとの関係にヒビが入ったり、性行為自体が嫌いになったりなど、女性のQOLを低下させる大きな要因になります。
腟粘膜のコラーゲン減少による症状
閉経前の腟は、エストロゲンの作用で皮膚や粘膜の厚みと潤いのある状態を保っています。
しかし、閉経に伴いコラーゲンが減少して腟粘膜上皮が薄くなると、血流が低下して腟粘膜のヒダがペラペラになったり、腟内が乾燥して腟が萎縮してしまうのです。
潤い不足で性交痛が起こることもあり、腟内に傷がついてしまうこともあるため注意が必要です。
乳酸桿菌の減少による症状
エストロゲンの分泌量減少により腟粘膜の腟上皮細胞に含まれるグリコーゲンが減少すると、膣内の酸性を保つ乳酸桿菌(デーデルライン桿菌)が減少するため、腟内のpH値が上昇してアルカリ性に傾いて腟の自浄作用が弱まってしまいます。
以下は、乳酸桿菌の減少による症状です。
- 雑菌の繁殖
- 腟炎
- におい
- 黄色いおりもの
- かゆみ
潤い不足により腟内に傷ができてしまうと、そこから雑菌が繁殖して炎症が起こり、かゆみや黄色いおりもの、においにつながります。
腟萎縮による炎症のことを「萎縮性腟炎」といいます。萎縮性腟炎を発症すると、慢性の腟感染症や尿路機能障害になりやすくなったり性交痛の原因になったりするため、気になる症状がある場合は早めに受診しましょう。
症状を感じたらクリニックを受診すべき理由
上記でご紹介したように、腟萎縮はさまざまな不快な症状を引き起こし、女性のQOLの低下を招く要因になります。そのため、デリケートゾーンに気になる症状を感じたら、早めにクリニックを受診することが大切です。
腟萎縮によって引き起こされるGSM(閉経関連泌尿生殖器症候群)は、慢性的かつ進行性の疾患です。更年期の女性の半数以上が、なんらかの症状に悩まされているといわれています。
しかし、デリケートゾーンのお悩みという恥ずかしさから、誰にも相談できずひとりで抱え込んでいる女性も多く、外に出ることすら嫌になってしまうこともあります。
近年、腟萎縮による症状に対して薬物治療やレーザー治療、ヒアルロン酸注入などさまざまな方法で治療が行われているので、閉経後の長い人生を楽しく過ごすためにも早めに受診しましょう。
まとめ
「腟萎縮」のメカニズムやクリニックを受診すべき理由をご紹介しました。
腟萎縮は、閉経に伴うエストロゲンの分泌量減少によって起こります。乾燥やかゆみ、性交痛などデリケートゾーンのさまざまな不快な症状が引き起こされ、進行すると雑菌が繁殖して萎縮性腟炎などGSMの原因となります。
また、老化によって腟にゆるみが生じると、頻尿や尿漏れ、尿意切迫感など泌尿器系の症状が引き起こされる可能性も。
腟萎縮などの老化現象は、更年期障害の症状が出ると同時に起こっていると考えられます。閉経後にほてりやのぼせなどの症状があるときは、一度クリニックへ相談に行ってみることをおすすめします。